ブティックで大根まんじゅうを食べる。そしてパグの絵

フェイスブックなるものをはじめてから、ついうっかり、かなりの時間を費やしてきた。繋がっとくといいかなぁとか、他の人のにもコメントしていいねしなくちゃとか思って時期もあったなぁ。

台湾では、年配の人もスマホを使いこなして、あちこちで孫の情報を見せびらかしている。

スマホはおもに、旅行自慢とか家族自慢とかのツール。だから年齢に関係なく台湾人と話していると、すぐ頼んでもいないのにスマホを取り出して(かなりの確率で画面にヒビが入っている)、フォルダリングした写真を延々と見せられる。もういいですよ、と思っているとその場にいる他の台湾人が話をかぶせて自分の写真を割り込ませてくる。ほっとくと、ずっと続く。この遠慮のなさにホッとする。

日本人同士だと、お互いに相手の顔色をうかがって会話するけど、台湾では嫌なら嫌でいいし、でも案外気もつかってくれるしで、図々しさと親切の距離感が、なんだかすごくちょうどいい。

私はだらだらと同じグループとつるむのは苦手だけれど、人の話を聞くのは好き。だから、こうして当初の話題とはまったく関係のない話を延々と聞きながら、自分なりの情報収集をしている時間が楽しかったりする。

こないだはブティックに服買いに行って、4時間もお店のおばさんたちと遊んでた。たしかに素敵な服も買ったけど、それ以上におばさんたちとの会話が楽しかった。

おばさんは、私が服を見ていると(ブティックなのに!)焼き立ての大根まんじゅうをくれたのだ。

私が並んで買ってきたの、

すごい老舗でいつも行列してるのよ、

今日なんて20人も並んでたの!食べる?食べるでしょ??

ちょっとだけ味見させてもらおうと思ったら、ひとつ食べなさい、と熱々の大根まんじゅうをにぎらされた。

お祭りでフレンチフライのSサイズ頼んだときみたいに、紙の袋に入った大根まんじゅうはびっくりするほどずしっと重くて、まんじゅうといっても外皮は揚げ焼きみたいにカリッとなっていた。

噛みつくとむっちりカリッとした小麦の皮の中に、大根の細切りがびっしり詰まっていて、蒸せた大根の香りがふわっと立ち上る。噛みきれなくてピロっとついてくる大根を口に収めながら、不思議な香辛料の香りと大根の甘さを味わった。

食べながらもおばちゃんたちの話しは止まらない。あいずちを打ちながら、手のひらぐらいあるまんじゅうと格闘する。

 

お茶、飲むでしょ?

 

3人でプラスチックの椅子に座り、レジカウンターの上でむしゃむしゃ食べて、台湾紅茶が入ったマグカップを3つ並べて、そのすぐ横には私があとで試着する、といった服が無造作に置いてあって。お客さんが来ても一向に気にせず、お客さんも気にせず、そんな感じで話は弾む。

食べてからもたっぷりおしゃべりして、身内のゲイの写真もたっぷり見せてもらって、外が暗くなってからやっと試着して、買おうとしてた服を似たのがあるしと迷っていたら、それはやめておきなさい、とサッサと片付けられたりして、こんなに楽しいお買い物は台湾の醍醐味だなぁと帰り道までも嬉しくなってウキウキした。

 

たっぷりの大根まんじゅうも消化して、帰りに軽く麺を食べて、道を間違えたりしていたらおじいさんが書店の前で絵を売っていた。

書店に入るまでの4,5段の階段にそっと並べられたユーモラスな動物の絵。有名画家の自画像みたいに背面はむらのある一色で塗られていて、動物が浮き出すように目に飛び込んできた。あ、パグだ!!ベージュのパグがシワシワの顔でムンっという感じにそこに座っている。

おじいさんは、ボタンシャツを着てまるで壁に同化するようにしてひっそりと座っていたけれど、そっとそこから出てきて、あくまでも優しく、これは僕の絵、こちらは親戚の子の絵だよ、と教えてくれた。おじいさんが書いた動物のが、私はとても好きだ。

でもひとつしおりも欲しかったから、じっくり悩んでからおじいさんが描いたムンッとしているパグのカードと、親戚の子の描いた繊細で明るい羊のしおりを買った。僕はリタイアして趣味で描いてるんだよ、と言っていたけれど私にはとても価値のある絵に見えた。

絵が好きで、描いたものを他の人にも手にしてほしくて、リタイアしてから路上で絵を売る。その垣根のない心と、まっすぐな考え方、なんて豊かなんだろう。

机に飾ったパグの絵を見るたびに、笑ってしまう。

なんて絵なんだろう。

人と会うって、話すって、なんて素敵なことなんだろう。

言葉とか場とか雰囲気とか空気とか、そういうものをまさにその場で共有するってなんてイキイキしたことなんだろう。

誰とでも微笑み合ってもなにも怖くない台湾ってすごく愛しい国だとあらためて思う。

 

 

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