ただそっと置いて待つことで薬になる梅仕事に思う

梅仕事の楽しみは、このスッとぬける酸味と甘やかさのまじる香りにある。最後にわずかにかんじる苦味がまた梅らしい。
台湾にいる時には、やりたくてもできなかった梅仕事。塩やカメや梅やらをさまざまに用意してまで、台湾での暮らしを重ねていきたいとは思っていなかったのかもしれない。それに、都会には手間仕事を遠ざける独特の時間の流れがあって、待つことよりすぐ手に入れること、じっくりと引き出すより結果からぶつけること、そういうことに知らないうちに心を合わせてしまうものなのかもしれない。
大都会の台北をはなれ、最後の楽園台東で暮らしてみると、余白にあふれた人たちがいた。私たちが大切だと思いながらも疑問を抱いていた仕事中心の暮らしや、お金中心の暮らし、台東にはそれ以外の選択肢があった。
そうしてそんな人たちと出逢って、私は自分が梅干しや味噌を仕込んで暮らしを重ねていきたいと望んでいることを自覚した。
今年漬けた梅が3年ものになり、5年ものになるのを待つ場所。その一年一年を残していける場所。それは日本だな、そう思った。

日本に帰国した今年の梅仕事は、だから特別ワクワクする。

どれもいますぐには食べられない。そして、ただそっと暗い場所で静かに置くほどに美味しくなるし、薬となる食べもの。自分の力でどうにもならない変化を、忘れたまま待つことができる暮らしがやっぱりとても嬉しい。

これからは、積み重ねながら育てながら暮らしていきたいと思う。

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